太極拳理の要諦から抜粋
「太極拳,一名《長拳》,又名《十三勢》。
長拳者,如長江大海,沿沿不絶也。十三勢者,分棚、捋、擠、按、採、挒、肘、靠、進、退、顧、眄、定
也。
棚、捋、擠、按,即坎、離、震、兌。四正方也;採、挒、肘、靠,即乾、坤、艮、巽。四斜角也。此八卦
也。進歩、退歩、左顧、右眄、中定,即金、木、水、火、土也。此五行也。合而言之,日《十三勢》。
「大極拳は、《長拳》とも名付けられ、又《十三勢》とも名付けられている。
長拳と名付けられたのは、この拳法の動作が大河(長い川)や海のように、滔々として絶えることのない
様子から来ている。
十三勢と言われているのは、この拳法の勢が総じて棚、捋、擠、按、採、挒、肘、靠、進、退、顧、眄、定に分けられているからである。
棚、捋、擠、按は、すなわち坎、離、震、兌であり、これは(北、南、東、西の)四つの正しい方向であり、採、例、肘、二罪は、すなわち乾、坤、艮、巽であり、これは(西北、西南、東北、東南の)四つの斜めの方位である。
これは八卦のことである。
進歩、退歩、左顧、右眄、中定は、すなわち金、木、水、火、土である。
これは五行のことである。
合わせて《十三勢》と言うのである。
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釈名の釈名
この二文字は″しゃくめい″とも読めますが、より正しい読み方は″しゃくみょう″で、経論を解釈する
際、まずその題目を説き明かすことを指したということです。
ここで王宗岳が、自分がなぜ″長拳″、″十三勢″と呼ばれていた拳法を″大極拳″と名付けた(かつまた
《太極拳論》を書いた)のか、について説き明かしているのです。
つまり彼が、自分の言う″太極拳″は自分が発明した何か新しい拳法ではなく、もともと″十三勢″や″長拳″と呼ばれてきた拳法の原理原則がすべて八卦、五行の理論に合っていることを、自分が、言わば、発見して、それをより根源的な哲理の高さ、″太極″という高度な概念から総合し、概括しただけです、ということを説明しているのです。
前述のように、八卦も五行もみな太極陰陽の哲理に帰結するのです。
中国の古代哲学思想、易、陰陽、八卦、五行のような概念が、中国の医学や軍事学の領域で広く応用されていることはよく知られていますが、実は社会生活の外の領域でも、内家拳(形意拳、八卦掌、大極拳)でも、広く応用されています。
なかんずく大極拳は、その基本理論から細かい動作まで、この思想で貫かれていると言ってよいぐらいです。